ある日の放課後、急に大雨が降り出した。
皆が皆傘を忘れていた。もちろん俺も例外ではなかった。
狭い下駄箱に人が溢れる。
下駄箱で絶望している人たちの中に、知っている顔を見つけた。
二岡さんだった。彼女も、傘を忘れているようだ。
「傘、貸そうか?」
たしかに、高橋はそう言った。二岡さんは苦笑いをしながら
「いや、いいよ。濡れて帰るよ」
と答え、走り出した。
それを聞くと、傘を差し、一人で高橋は歩き出した。
ある日の放課後。急な雨が降り出した。
私は、傘を忘れてしまっていたし、他の人も多く忘れていた。
狭い下駄箱に人が溢れている。残念ながら、友達もみんな忘れていた。
走るか。
「傘、貸そうか?」
まさに今、雨の中を走り出そうとしたときだった。
その声がする方を振り向くと、いたのは高橋君と阿部君。
声をかけたのは今となっては当然のようにも思える、高橋君。
鳥肌がたった気がした。下心見え見えで気持ち悪い。
私は、笑いながら
「いや、いいよ。濡れて帰るよ」
と伝えてから、雨の中を走り出した。
髪と足に刺さる水が、体を震わした。